2023年度各賞受賞者一覧

学会賞

粒子設計を基盤とした製剤開発に貢献する研究
竹内 洋文(岐阜薬科大学)

竹内洋文博士は、「人に優しい製剤設計」を研究ポリシーとして掲げ、粉体工学を基盤とした圧縮成形の基礎研究、口腔内崩壊錠のための粒子設計法を確立された。近年ではフィルム製剤やゼリー製剤の開発研究や評価法の開発も進められ多くの成果を挙げてこられた。また、同時にコロイド粒子の製剤研究として機能性高分子で表面修飾したリポソーム製剤を用い、粘膜付着機能を付与することでペプチドの経粘膜的投与を可能にする製剤や点眼による後眼部への薬物送達など新規性のある多くの研究を行って実績を重ね、当該分野における世界的リーダーとして活躍されてきた。これら研究成果は、原著論文311報、国内外招待講演100回以上をはじめとする多くの著書、総説・解説に報告されている。一方で、同氏は本学会第23代会長として学会運営に多大な貢献をされた。とりわけ本学会の学術団体としての発展並びに公益社団法人としての基盤を強固にするための諸整備に尽力された。同氏は、第31年会会長として年会運営に当たられたほか、評議員や各種委員会活動においても活躍されてきた。

功績賞

岡田 弘晃(株式会社岡田DDS研究所)

岡田弘晃博士は、武田薬品工業株式会社在職時代において開発された本邦発のDDS製剤により、国内外の製剤研究、医薬品開発に対して大きなインパクトを与え、社会貢献のみならず日本の製剤技術の高さを広めるなど多くの貢献を果たしてこられた。また、東京薬科大学に移られてからは、製剤研究を通じて、数多くの学術論文、総説を報告すると共に、多くの優秀な学生を輩出され、薬剤学分野へ貢献されてきた。特に、本学会においては、製剤の達人による製剤技術の伝承講習会や製剤技術伝承実習講習会、製剤技師認定制度の立ち上げなど、製剤研究者、製剤技術者育成のための様々な取り組みを企画され、本学会の発展、日本の薬剤・製剤学のレベル向上に大きく寄与されてこられた。これらの成果については、教育に資する多くの著書などを通じて社会に還元されてきた。今後も、学会での事業には引き続き携わられ、貢献して頂けることを期待する。

奨励賞

腹膜播種治療を目指した臨床応用可能な腹腔内投与型核酸医薬製剤の開発
安藤英紀(徳島大学大学院医歯薬学研究部)

安藤英紀博士は、核酸医薬や抗体医薬などバイオ医薬品の製剤開発に精力的に取り組み、これまでにチミジル酸合成酵素に対するshort hairpin RNA(TS shRNA)とカチオン性リポソーム複合体(DFP-10825)を開発した。このDFP-10825を腹腔内投与すると腹腔内に長期間滞留し、高効率にTS shRNAを腫瘍に送達できることを明らかにするとともに、臨床での使用を考えた凍結乾燥製剤として開発するなど、独創的な成果を挙げつつあり、将来性も見込まれる。これらの成果はJournal of Controlled ReleaseやInternational Journal of Pharmaceutics、Advanced Drug Delivery Review、Cancer Medicine等の一流誌を含む原著論文64報(筆頭著者として15報)、解説・総説11編にまとめられ、特許も2件出願している。同氏は、年会組織委員やSNPEE組織委員会アドバイザー、シンポジストを始め、多数の一般演題発表を行うなど本学会においても精力的に活躍している。

内因性化合物の生理学的速度論モデル解析に基づいた薬物相互作用予測法の開発
吉門崇(横浜薬科大学)

吉門崇博士は、肝OATPトランスポーターを介した薬物相互作用を中心に研究に取り組み、血中濃度データとin vitro試験に基づいた生理学的薬物速度論(PBPK)モデルを用いた解析により基質薬と阻害薬の組合せに寄らない標準化されたPBPKモデルの構築やOATPの内在性基質であるコプロポルフィリンⅠ(CP-Ⅰ)を薬物相互作用バイオマーカーとして用いたOATPプローブ基質薬と阻害薬との相互作用予測法、計算科学をPBPKに取り入れたrobustなPBPKモデル解析法などの開発を行ってきた。これらの成果は薬剤の体内動態を基盤とした薬効および副作用の定量的な予測技術の確立に大きく貢献するものであり、同氏の将来性を示すものである。同氏の業績は原著論文25報(うち筆頭著者10報)にまとめられている。同氏は、年会の組織委員や薬剤学編集委員、FG執行部メンバーを始め、ラウンドテーブルのシンポジストや多数の一般演題発表を行うなど本学会において極めて精力的に活躍している。

タケル&アヤ・ヒグチ記念栄誉講演賞

—当期設定なし—

タケル&アヤ・ヒグチ記念賞

石田竜弘(徳島大学大学院医歯薬学研究部)

石田竜弘博士は、DDS領域、特にPEG修飾リポソームに関する研究成果は傑出しており、卓越した研究業績(原著論文179報,総説43報,著書24件など)をあげられ、国内に留まらず、国際的な研究活動も盛んに進められている。本学会の運営・活動においても、理事職ほか複数回の年会組織委員や各種委員を務められ、高い貢献度が認められる。

旭化成創剤開発技術賞

ミトコンドリアを標的とした癌光治療を実践するナノカプセルの創製
山田勇磨(北海道大学大学院薬学研究院)


山田勇磨博士は癌細胞ミトコンドリアを標的とした癌に対する光治療の検証に着手し、この治療法が有効であることを検証するとともに、ミトコンドリアへ効率的にphotosensitizerを運搬するDDS研究を推進してきた。その結果同氏はミトコンドリアと膜融合可能なナノキャリアーをスクリーニングし、最終的にミトコンドリア高融合性ナノカプセルMITO-porterの開発に成功した。本研究を基に既に多くの特許を取得している。さらに最近では医師と連携した臨床研究開始を目指して北海道大学病院・臨床開発研究センターとの連携の下、GMP製剤の準備、非臨床研究の計画も進めている。以上同氏が実践してきたナノキャリアーをベースとするDDS研究は今後の癌治療へ大きく貢献するものと期待され、また実用化に向けての検討も着手されている。

旭化成創剤研究奨励賞

受賞なし

永井記念国際女性科学者賞

小川法子(愛知学院大学薬学部)

小川法子博士は、鼻粘膜に投与する軟膏剤を用いた花粉症治療薬の研究により学位を取得後、シクロデキストリンと薬物との相互作用を解析する研究に取り組んできた。愛知学院大学に着任後、さらにその研究を発展させ、難水溶性化合物に対して両親媒性の高分子との固体分散体化やシクロデキストリンと包接化することで溶解性を改善する製剤技術に関し、化合物と添加剤との相互作用などの基礎的物性に立脚した研究を行ってきた。これらの研究成果については、著書4編、学術論文38報、総説4報などにまとめて報告している。以上のように同氏は、物理化学、製剤学の分野で精力的に研究を行い、着実に成果を挙げている。また、科学研究費補助金や堀科学芸術振興財団、愛知学院大学医療生命薬学研究所などの競争的研究助成金を研究代表者として獲得するなど、積極的に先進的な研究に取り組んでいる。これらの成果が認められ、日本薬剤学会では日本薬剤学旭化成創剤研究奨励賞などを、シクロデキストリン学会ではシクロデキストリン奨励賞を受賞している。本学会においても、代議員や製剤・創剤セミナー実行委員、第38年会実行委員を務めるなど活躍中である。

優秀論文賞

The formation of an amorphous composite between flavonoid compounds: Enhanced solubility in both oil components and aqueous media
Hiromasa Uchiyama, Taiga Ando, Kazunori Kadota, Yuichi Tozuka
J. Drug Deliv. Sci. Tech. 62,102410 (2021)

難水溶性化合物の水溶性改善のため、NaringeninとHesperetinの非晶質複合体の探索を行い、油系基材への溶解性向上、さらに物理的な安定性を持つ複合体を見出した論文である。非晶質複合体におけるNaringeninとHesperetinの両化合物の水性、油性溶媒への溶出性を保存前後にて確認するなど緻密な実験が行われている。本研究結果は、オリジナリティーが高く、今後の製剤発展に寄与することが期待される研究内容であり、本学会への貢献も高い。

創剤特別賞

受賞なし

国際フェロー称号

受賞なし

「薬と健康の週間」懸賞論文

薬剤師過剰時代:薬剤師が生き残るための方法と志向―薬学生の立場から―

  • 第1席 山下七夢(徳島大学)
  • 第2席 西原鈴音(徳島大学)
  • 第3席 松山俊介(長崎国際大学)

製剤の達人称号

  • 土肥優史(アステラス製薬(株))
  • 平山壽和(ニプロ(株))
  • 井上和博(東亜薬品(株))