2022年度各賞受賞者一覧

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学会賞

エステラーゼの構造・機能解析に基づくプロドラッグ/ソフトドラッグ開発に関する研究
今井輝子(第一薬科大学薬学部)

今井輝子博士は、多糖類やタンパク質を利用した製剤開発とプロドラッグ開発において優れた研究成果を挙げてきた。とりわけプロドラッグおよびソフトドラッグ開発の効率化を目的として、エステラーゼの機能解析や臓器発現に基づく薬物のデザイン方法、さらには動物種差の克服を目指した体内動態予測ツールの開発に関する研究では世界最先端の実績を重ね、当該分野をリードしてきた研究者である。これら研究成果は、サイエンスとして高いレベルであるとともに、製薬企業等における医薬品開発に貢献しうるtranslationalな研究としての意義も有し、原著論文147報、国内外招待講演40回以上をはじめとする多くの著書、総説、特許等に報告されている。一方で、同氏は本学会第22代会長として学会運営に多大な貢献をされた。とりわけ公益社団法人としての学会組織改革を達成され、本学会の運営基盤を確立された。同氏は、第35年会会長として年会運営に当たられたほか、評議員や各種委員会活動においても活躍されている。

功績賞

受賞なし

奨励賞

生体内で標的分子を吸着する多官能性ナノ粒子製剤の開発と疾患治療への応用
小出裕之(静岡県立大学薬学部)

小出裕之博士は、生体内で標的分子を吸着する合成高分子ナノ粒子や多官能性リポソーム製剤開発に関する研究を展開し、ヘパリン結合タンパク質やヒストンタンパク質を吸着する高分子ナノ粒子を利用した腫瘍増殖抑制、敗血症モデル治療などに実績を挙げている。また、消化管からの必要以上の吸収を防ぐ目的でインドール、グルコース等を吸着し排泄を促進するナノ粒子の開発に取り組むなど、抗体に代わるナノ粒子(プラスチック抗体)に関する独創的な成果を挙げつつあり、将来性も見込まれる。これらの成果はNature Chemistry、Nature Communications、Nature Protocols等の一流誌を含む原著論文40報にまとめられている。同氏は、年会組織委員やシンポジスト、多数の一般演題発表を行うなど本学会においても精力的に活躍している。

NMRを利用した薬物過飽和溶解現象の分子機構解明
植田圭祐(千葉大学大学院薬学研究院)

植田圭祐博士は、各種の特殊製剤によって形成される薬物の過飽和溶解挙動を、NMR等を用いて解析し、過飽和溶解状態や相分離挙動と薬物吸収性との関連性を明らかにした。また、固体NMR 等を用いた薬物・添加物間相互作用の解明や、クライオ透過型電子顕微鏡や液中-原子間力顕微鏡等を用いたナノ製剤の構造と物性との関連性の解明など、これら最先端技術を用いることで、薬物と添加剤の状態や成分間相互作用を、固体製剤から溶解後の溶液状態まで分子レベルで解明できることを示してきた。これらの成果は製剤の物性評価技術確立に大きく貢献するものであり、当該分野における同氏の将来性を示すものである。同氏の業績は原著論文51報(うち筆頭著者27;共筆頭7を含む)にまとめられている。同氏はFG幹事やGlobal Education Seminar実行委員長、多数の一般演題発表を行うなど本学会において極めて精力的に活躍している。

細胞の高度機能化による有効かつ安全な細胞医薬の開発
草森浩輔(東京理科大学薬学部)

草森浩輔博士は、高度機能化による優れた細胞医薬の開発研究を行い、移植細胞が生体内でがん化しても直ちに除去できることを目指した自殺遺伝子とアポトーシス誘導剤を利用した薬剤応答性細胞増殖制御システムの開発や、腫瘍集積性を有する間葉系幹細胞の機能化を目的に間葉系幹細胞表面を抗がん薬等で修飾したのちに投与することによるがん標的治療など、細胞を使ったドラッグデリバリーシステム開発において独創的な研究成果を挙げている。また、疑似組織の形成を狙った種々細胞種に対するスフェロイド化技術を確立するなど、細胞移植の研究にも従事しており、いずれの業績からも当該分野における将来性が見込まれる。同氏の研究成果は、原著論文55報(うち筆頭著者7)、総説13報にまとめられているほか、本学会においてもSNPEE組織委員長、英語セミナー委員、多数の一般演題発表を行うなど精力的に活躍している。

タケル&アヤ・ヒグチ記念栄誉講演賞

Dr. William Neil Charman (Faculty of Pharmacy and Pharmaceutical Sciences, Monash University)

Dr. William Neil Charman氏は、創薬やDDSに関する研究に従事された。特にマラリアなどの顧みられない熱帯病薬の創薬、薬物送達および薬学における主要な問題を解決するための学際的かつ共同的な側面から様々な研究を主導され,これまでに200報以上の科学論文を発表し、200件以上の国際的な招待講演を行われ、薬剤学領域における顕著な研究成果を挙げられている。FIP(国際薬学連合)の教育部門(FIPEd)の議長を務められるなど、世界的リーダーとしても活躍されてこられた。

タケル&アヤ・ヒグチ記念賞

—当期設定なし—

旭化成創剤開発技術賞

タズベリク錠における連続生産技術の適用
石本隼人、小川真裕、寿命大輔、市原 駿(エーザイ株式会社)

連続生産技術はこれまでのバッチ式製法とは異なり、主薬及び添加剤を連続的に供給し、これを製剤技術、PAT技術及び制御技術により、錠剤を連続的に生産する製法である。本法は人手を介せずまた高度の品質保証システムにより製剤の安全性を保障しうるものとしてICHガイドラインにも新たに収載され、また各局の当局からも推奨されている高度生産システムである。米国では2015年に世界で初めてFDAにより承認を受けたシステムであるが、本邦では同社が内資企業として2021年に初めて承認を取得した。前述したように連続生産システムは高度の製剤技術、PAT技術及び制御技術が融合され初めて稼働するものであり、その実用化に内資企業として初めて成功した実績は、技術的観点は勿論レギュレーションの視点からも高く評価される。またこの成功例は今後の日本における製薬品質保証の高度化にも大きく貢献するものと期待される。

旭化成創剤研究奨励賞

免疫疾患治療根治に向けた標的化DDS創薬研究
清水広介(浜松医科大学光尖端医学教育研究センター)

清水広介博士はこれまでリポソームを用いたDDS創薬を主たる研究テーマとして難治性疾患克服を目的とした治療薬・診断薬の開発に研究を行ってきた。特に標的部位へ薬物を効率良く送達する標的化DDS製剤の研究に尽力し、多くの新規アイデアを駆使することにより、がんや脳梗塞に対する主作用増強・副作用軽減推進に貢献してきた。また最近では薬剤内封自己抗原修飾リポソームを新規に開発し、自己抗原認識T細胞を傷害することによる多発性硬化症の改善を示唆する研究も行っている。以上同氏の研究は今後の難治性疾患への新規治療法開発に大きく貢献することが期待される。

アルブミンの体内動態特性に基づくDDSキャリアの開発に関する研究
異島 優(徳島大学大学院医歯薬学研究部)

異島優博士は長年にわたりアルブミンの生理機能に関する研究を行い、アルブミンが血清中以外にも広く分布し、その分布には多種多様なアルブミン受容体の存在があることを明らかにしてきた。一方同氏は、各臓器には部位特異的なアルブミン受容体が存在すれば、各アルブミン受容体に特異的に結合するアルブミンを創生することにより、各臓器に選択的に分布しうるアルブミンをDDSキャリアとして応用できる可能性があることを提唱してきた。その成果として原料であるHSAの構造が一部変化したアルブミン結合型パクリタキセル製剤(Abraxane)が効率的に腫瘍に送達されることを明らかにした。以上の研究によりアルブミンがDDSキャリアとして有用であることが証明され、また今後種々の薬物に適用することで幅広い医療に貢献することが期待される。

永井記念国際女性科学者賞

樋口ゆり子(京都大学大学院薬学研究科)

樋口ゆり子博士は、これまで一貫してドラッグデリバリーシステムの開発研究を推進し、間葉系幹細胞を創薬モダリティとして応用する際の体内動態評価法として組織吸引固定デバイスを開発し生きた組織中での一細胞蛍光イメージングに成功したほか、細胞膜や抗体などのタンパク質に生体直交反応する非天然の官能基を導入することで遺伝子導入ではできない分子修飾を可能とし、低分子抗体を、配向性を揃えて細胞膜に修飾することで間葉系幹細胞の炎症肝へのデリバリーにも成功した。同氏はこれまでに63報の英語原著論文、6件の特許出願のほか、本学会奨励賞、日本DDS学会奨励賞、COI2021会議における科学技術振興機構理事長賞などの受賞のほか、内閣府ムーンショット型研究開発制度において新たなムーンショット目標の候補に採択され調査研究チームをチームリーダーとして牽引、文部科学省科学技術・学術政策研究所のナイスステップな研究者2021に選出されるなど極めて魅力的な薬剤学研究を展開している。本学会においても、第1回日韓若手薬剤学研究者ワークショップ実行委員長や評議員を務めるなど活躍中である。

優秀論文賞

—当期設定なし—

創剤特別賞

受賞なし

国際フェロー称号

Dr. William Neil Charman (Faculty of Pharmacy and Pharmaceutical Sciences, Monash University)

「薬と健康の週間」懸賞論文

東日本大震災から10年、災害医療における今後の展望について -薬学生の立場から-

  • 第1席 原 悠斗(徳島大学)
  • 第2席 渡辺日菜子(静岡県立大学)
  • 第3席 関根奈央(昭和薬科大学)

製剤の達人称号

  • 宮島 誠(第一三共(株))
  • 山口正純(千寿製薬(株))
  • 宇治謹吾(日光ケミカルズ(株))
  • 小島宏行(アステラス製薬(株))
  • 荒井宏明(第一三共(株))
  • 本田洋介(旭化成(株))
  • 大島孝雄(科研製薬(株))
  • 鈴木恭介(第一三共RDノバーレ(株))
  • 石本隼人(エーザイ(株))