2020年度各賞受賞者一覧

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学会賞

血液網膜関門機能と薬物網膜移行に関する生物薬剤学的研究
細谷健一(富山大学大学院医学薬学研究部)

細谷健一博士は、これまで一貫して血液組織関門薬物輸送研究を推進し、これまで未解明であった「血液網膜関門の機能及び物質輸送」の詳細を解明した。特に、「条件的不死化網膜毛細血管内皮細胞株を用いた血液網膜関門実験系」を世界に先駆けて開発し、生物薬剤学と眼科領域の発展に大きく寄与されている。原著論文は既に180報を越え、AAPSからFellow(2009)を授与されるなど、その業績は国内外で高く評価されている。また、本学会では、評議員/代議員を2006年から務められ、特に昨年の第34年会(富山)では年会長として年会を成功に導くなど、薬剤学会の発展に多大な貢献が認められる。以上の理由から、選考委員会において全会一致で選出した。

功績賞

受賞なし

奨励賞

精神神経疾患治療に寄与するバイオ医薬の脳内送達法の開発
亀井敬泰(神戸学院大学薬学部)

亀井敬泰博士は、タンパク質やペプチドなどバイオ医薬の非侵襲的DDS開発を精力的に展開している。独創的な成果として、細胞膜透過ペプチドをバイオ医薬と混合し、経口吸収性や経鼻吸収性を飛躍的に向上させた点が挙げられる。これらの技術を基盤に、薬剤学領域では手つかずの認知症治療にも挑戦しており、今後の発展も期待される。英語原著論文33報のうち筆頭が25報あることから、自身の主体的な貢献が裏付けられている。経口吸収FG執行委員、英語セミナー委員を通じて年会でのラウンドテーブルやAPSTJ Global Education Seminarを主宰するなど若手研究者の一人として本学会に貢献している。以上の理由から、選考委員会において全会一致で選出した。

薬剤学を基盤としたDDS・抗体医薬のがん治療に関する研究
畠山浩人(千葉大学大学院薬学研究院)

畠山浩人博士は、DDS開発や抗体医薬、がん生物学など基礎から応用まで様々な分野の研究に挑戦し、いずれの領域でも薬物送達学や薬物動態学など薬剤学を基盤として、独創性に優れた研究成果を挙げている。英語原著論文55報を発表し、平均IFが6を超えており、研究のインパクトの高さが示されている。FIP-APSTJジョイントワークショップでの運営、薬剤学80(1)での対談を企画するなど、若手研究者の一人として本学会に貢献し、今後更なる貢献も期待できる。以上の理由から、選考委員会において全会一致で選出した。

シクロデキストリンを用いた超分子アクセサリーの設計と製剤素材への有効利用
東 大志(熊本大学大学院先導機構)

東大志博士は、シクロデキストリンを用いて様々な分子アクセサリーを構築し、多様化する医薬品に対する製剤技術を開発している。最近では、薬学に超分子化学の概念を取り込んだ新規学術領域「超分子薬学」を提唱し、論文発表やシンポジウムを主宰するなど、活発に活動している。これまでに原著論文101報を発表しており、2018年から文部科学省の卓越研究員として熊本大学にポジションを得るなど、その成果は高く評価されている。薬剤学会の会員歴も12年あり、第35年会(熊本)の組織委員、超分子薬剤学FG広報を務めるなど、本学会に貢献し、今後更なる貢献も期待できる。以上の理由から、選考委員会において全会一致で選出した。

タケル&アヤ・ヒグチ記念栄誉講演賞

Arto Urtti, Ph.D. (University of Helsinki)

Urtti教授は、ナノキャリア技術をベースとする眼科領域でのDDS研究の世界的権威であり、20年以上本分野の研究をリードし、数多くの業績を積み上げて来られた。原著論文は300報を数え、H-indexは60,総引用件数は12,000回を越える。また、著書・総説は45報、特許申請数は25件にのぼる。その間、40名以上の博士号取得者を輩出するとともに、30名以上のポスドクを受け入れるなど、教育面においても多大な貢献をなされている。

また、Eur. J. Pharm. Sci.の Editor in Chief(2001-2011年)、Adv. Drug Deliv. Rev.のTheme editor(2006、2017年)、PLoS OneのEditor(2007-2013年)などの国際雑誌の運営にも多大な貢献をなされている。

Urtti教授は、1986年に米国カンザス大学(KU)薬学部・A. Repta教授のもとにポスドクとして留学されたことをご縁としてUrtti教授のもとで学位を取られた4名がKUでポスドクとなっている。さらに、GPENの運営にも20年来携わっておられ、Uppsala(2000年)、Helsinki(2014年)に開催された年会で組織責任者を務められるなど、現在もKUと欧州の大学との関係をつなぐキーマンとなっている。

以上、研究、社会および教育面での薬剤学分野、特にDDS分野へのUrtti教授の貢献は顕著であり、先生のご功績は、日本薬剤学会におけるタケル&アヤ・ヒグチ記念栄誉講演賞の受賞に十分値するものと、選考委員会において全会一致で決定した。

タケル&アヤ・ヒグチ記念賞

当期設定なし

旭化成創剤開発技術賞

高機能製剤開発の基盤となる経口吸収予測研究
上林 敦(アステラス製薬株式会社製剤研究所)

本研究は、製剤設計上最も重要な吸収特性を精度良く予測する方法を開発することを目的にしている。経口投与後の製剤からの薬物吸収は、製剤の崩壊・溶解、消化管移動や、膜透過が大きく関与している。とくに、固体分散体製剤や、徐放性製剤などの、機能性製剤では、製剤の崩壊・溶解、消化管移動は、複雑となり定量的予則を困難にする。上林 敦博士は、これらの製剤の挙動の違いを反映した溶出試験法をデザインし、微分方程式でその過程を表現した。この in silico 予測モデルにより、種々のタイプの製剤を経口投与したときの薬物動態を精度良く予測可能にしている。アステラス製薬株式会社では、同氏が開発してきた予測研究を利用して高度な製剤設計が実践されている。本アプローチは、既に、イクスタンジ錠や、スージャヌ配合錠など、多くの医薬品開発で活用されており、本研究は、完成度が非常に高く実用的で、開発技術賞に値すると認められる。

旭化成創剤研究奨励賞

分子複合体化による医薬品物性向上ならびに経皮吸収製剤への応用
古石誉之(星薬科大学薬学部)

本研究は、シクロデキストリンや共結晶などの分子複合体による原薬の物性改質による創剤(経皮吸収剤)開発であり、過去多くの研究がなされている。しかるに、一般に、塩型の薬物の経皮吸収性は、悪化すると考えられるが、薬物を新規なイオン液体化により皮膚への粘着基材マトリックス中の溶解度を改善して、基材中の薬物保持量の増大と皮膚透過性を向上させるという発想の転換を試みている。薬物には、非麻薬性鎮痛剤エプタゾシン(EPZ)を選択しEPZを遊離体から塩型にすることにより、粘着剤のオイドラギットEマトリックス中の保持量を増大させ、透過性も向上させた。本研究は、従来とは異なる発想の具現化を目指すものであり、奨励賞に値すると認められる。

旭化成研究助成金授与

マイクロタブレット型顆粒剤「ピートル®顆粒分包」の製剤設計
倉嶋 誉、一色信行、大森浩明(キッセイ薬品工業株式会社)

透析患者に長期間服用される高リン血症治療薬スクロオキシ水酸化鉄剤は、その独特の匂いからアドヒアランスが低く、その向上が強く求められている。受賞者等は、咀嚼しないで少量の水で服用できる直径が2.3mmのマイクロタブレット型顆粒剤「ピートル®顆粒分包」を開発した。本剤は、臨床上非常に有意義な薬剤として評価されており、その開発コンセプトは高く評価される。また、多くの課題を克服してマイクロタブレットの製造技術が開発されたと思われる。その機構を明らかにすれば、技術の観点からも高く評価されよう。以上の観点から、さらなる研究の助成に値する。

永井記念国際女性科学者賞

武田真莉子(神戸学院大学薬学部)

武田真莉子教授は、一貫してインスリンに代表されるバイオ医薬の薬物送達システムに関する研究に従事されており、これまでに107報の英語原著論文を発表している。特にバイオ医薬の非侵襲的製剤化(経鼻投与による脳デリバリー)の開発研究については18件の特許申請を行い、マスコミにも頻繁に取り上げられており、社会的にも注目されている。日本薬剤学会に対しても、2004年から評議員(現代議員)であり、出版委員会委員長、フォーカスグループ(FG)統括委員会委員長、経口吸収FGリーダー(初代)を務められるなど、学会の発展に大きく寄与してこられている。国際的に見ても薬剤学の発展に貢献されており、今後の女性研究者の目標となる研究者である。以上の理由から、選考委員会において全会一致で選出した。

優秀論文賞

当期設定なし

創剤特別賞

受賞なし

国際フェロー称号

Arto Urtti, Ph.D. (University of Helsinki)

「薬と健康の週間」懸賞論文

令和・新時代に挑む薬学

  • 第1席 坂口貴俊(金沢大学)
  • 第2席 芦原まいか(静岡県立大学)
  • 第3席 徳吉泰春(静岡県立大学)

製剤の達人称号

未定