2013年度各賞受賞者一覧

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学会賞

薬物の経皮吸収性の評価と制御
杉林堅次(城西大学薬学部)

今回は公募のローテーションから大学所属者への授賞となる。杉林堅次博士は40年にわたる経皮吸収研究において多大な業績を挙げられ、国内外における第一人者としての確固たる地位を築かれた。また、城西大学薬学部長として、薬学6年制教育の舵取りを務められ、大学における研究・教育に大きく貢献された。また、日本薬剤学会においては、投稿論文審査委員長、製剤セミナー実行委員長を歴任され、さらに、2010年からの2年間、日本薬剤学会会長として財務の改善ならびに公益社団法人化を成し遂げられた。本学会の運営に対する献身的な取り組みは顕著である。以上の理由から、選考委員会において全会一致で選出した。

功績賞

藤岡敬治(DSファーマアニマルヘルス株式会社)

藤岡敬治博士は住友化学工業に入社以来、製剤技術研究に従事し、研究・開発を指揮・指導してきた。特に、コラーゲンを利用した「ミニペレット」および「シリコーン製剤」の発明は、持続放出型固形注射製剤として国内外で高く評価された。本学会においては製剤セミナー実行委員、製剤技術伝承委員会、製剤技師認定委員会をはじめ各種委員会で活動され、2011年には「製剤の達人」称号を授与された。新規製剤技術の発明ならびに後進の指導・育成を通して、製剤学の振興に大きく貢献された。以上の理由から、選考委員会において全会一致で選出した。

奨励賞

薬物の消化管内挙動の解析に基づくヒト経口吸収性評価法の構築
片岡 誠(摂南大学薬学部)

片岡 誠博士は、一貫して薬物の経口吸収性評価に関する研究に従事し、難溶解性薬物の経口吸収性の評価とその改善に多くの成果を挙げている。片岡博士が構築したD/Pシステムは消化管内での薬物の溶解過程と膜透過過程を同時に評価できる早期スクリーニング法として高く評価されている。また、最近はPETを利用して薬物の消化管内動態を経時的に評価する新しい取り組みも進めており、将来的にも顕著な業績を挙げることが期待される。本学会においても英語セミナー委員、経口吸収フォーカスグループ運営委員、第27年会事務局を担当するなど活発に活動されている。以上の理由から、選考委員会において全会一致で選出した。

超音波を利用した低侵襲的かつ組織特異的な遺伝子導入システムの構築
鈴木 亮(帝京大学薬学部)

鈴木 亮博士は、一つの製剤で診断と治療を可能にする新研究領域の中で、超音波造影ガスを封入したリポスーム(バブルリポソーム)を開発した。低侵襲的かつ組織特異的な遺伝子導入を可能にするユニークな方法であり、今後の応用の拡大が期待されるものである。将来的にも、今後の薬剤学領域を牽引する研究者の一人と期待される。また、本学会においてDDS製剤臨床応用フォーカスグループや英語セミナー委員として活動している。以上の理由から、選考委員会において全会一致で選出した。

タケル・アヤ・ヒグチ記念栄誉講演賞

—当期設定なし—

タケル・アヤ・ヒグチ記念賞

際田弘志(徳島大学ヘルスバイオサイエンス研究部)

候補者である 際田弘志教授は、低分子薬物や高分子薬物の体内動態を精密に制御することが可能なドラッグデリバリーシステムの開発を目指し、生物薬剤学及び薬物動態学を基盤として、ナノキャリアーの一つであるリポソームのDDSに関する基礎的、応用的研究に従事し、多大な成果を挙げてこられた。これらの研究成果は、別紙のとおり158報の原著論文をはじめ、12報の総説や著書にまとめられている。特にポリエチレングリコール(PEG) 修飾リポソーム投与時に抗 PEG 抗体が誘導されるという事実の発見は、きわめてインパクトの大きな研究成果であり、国際的にも高く評価されている。また、補体の活性化、リポソームの粒子径、表面物性などの物理化学的特性値と含めて、ABC現象にまつわる研究を継続的かつ緻密に実施されており、これらの成果もきわめて独創性が高いと思われる。さらに、これらの成果は、抗がん剤や核酸医薬品をはじめとする多くのDDS製剤の設計にも貢献するものと考えられる。

一方、候補者は、平成20~23年度に二期にわたって薬剤学会の理事を務めると共に、この間、平成22年には年会組織委員長として日本薬剤学会第25年会(徳島)を主催するなど日本薬剤学会の活動に対して多大な貢献をしてきている。また、徳島大学において長きにわたり後進の指導に当たられ、数々の役職も歴任され、現在は薬学部長の要職も務められている。

以上の理由から、際田弘志教授の功績は日本薬剤学会におけるタケル・アヤ・ヒグチ記念賞の受賞に十分値するものと考え、選考委員会において全会一致で決定したものである。

旭化成創剤開発技術賞

PATの基盤技術開発とRTRTのリクシアナ錠への適用
中川弘司、釜田 信、前田 仁(第一三共株式会社 製薬技術本部 製剤技術研究所)

PATは、製剤の重要工程パラメーター及び中間体の重要物質特性のモニタリングを非破壊でリアルタイムに行う技術である。候補者等は、PATに関し製造機器の洗浄の確認、2層錠の含量測定、有核錠の内核錠の位置検出法等の開発に関する基礎研究の成果を蓄積し、これを製品開発に応用可能なレベルにまで発展させた。具体的には、部門横断的チームを結成し、国内初の経口抗Xa阻害剤リクシアナ錠の製造にPATを導入しリアルタイムリリース試験(RTRT)を実施した。製剤均一性、溶出性、含量のRTRT技術が工業レベルで初めて開発された。本成果は、PATを導入したQbDにより開発される製品には、高いレベルで品質の恒常性を担保できることを示し、近未来の品質保証のあり方を提案しており、本賞の授賞に十分に値する。

旭化成創剤研究奨励賞

分子運動性・溶解性・吸収挙動の評価に基づく難溶性薬物の製剤開発
森部久仁一(千葉大学大学院 薬学研究院)

最近の新規医薬品開発の候補として取り挙げられる化合物の多くは難溶性であり、難溶性薬物の製剤開発は創薬・創剤における最重要課題となっている。本候補研究は、難溶性薬物の分子運動性・溶解性・吸収性の三者間の相互作用を定量的に明らかにすることにより製剤開発の迅速化と効率化を可能にすることである。具体的には、固体分散体の製剤化を想定し、難溶性薬物の過飽和溶液形成と吸収メカニズムの解明に取り組んでいる。この両者の関係を難溶性薬物の溶解状態と膜透過との関係とで説明している。以上の通り、本候補研究の物理化学的視点に基づいた製剤開発と物性評価を、in vitro, in vivo研究への展開が期待される。更に合理的な処方の最適化法の開発にも大いに期待される。

永井記念国際女性科学者賞

Prof. Dominique Duchêne(Universite de Paris-Sud)

Duchêne教授はパリ大学薬学部を卒業後、同大学の准教授、正教授として定年まで在籍された。その間、製剤学の研究領域に高分子化学、再生医療科学などの他の研究分野を取り込んだ世界的ネットワークを構築し、創薬の発展に顕著な業績を挙げられた。代表的研究は、生体粘膜付着性DDS製剤やナノ粒子型DDSのような粒子分散型DDS製剤の開発である。また、Duchêne教授の特筆すべき業績として、1)フランス製剤学シンポジウムを立ち上げ、大規模な国際シンポジウムに育て上げたこと、2)学術論文誌(STP Pharma、現JDDST)の発刊である。JDDSTは日本薬剤学会の公式英文誌となっている。また、日本との関係では、日仏DDSシンポジウムの立ち上げにも尽力された。このように、Duchêne教授は世界的な薬剤学の発展に顕著な業績をあげられており、今後の女性研究者の目標となる研究者である。以上の理由から、選考委員会において全会一致で選出した。

優秀論文賞

Enhanced skin permeation of piroxicam and pranoprofen induced from nanoparticles dispersed in propylene glycol aqueous solution
Y. Ikeda*, K. Higashi, K. Moribe, K. Yamamoto

J. Drug. Deliv. Sci. Tech., 22 (2), 131-137 (2012)

微粒子生成技術により調製したナノ粒子について、物性のみならずその皮膚透過性に与える影響について検討されている。ナノ粒子懸濁剤からの薬物の経皮吸収のメカニズムの解明の一助となるもので、新規性・発展性の面から高く評価できる内容であり,本賞の受賞に値すると思われる。

Yucatan micropig 皮膚を介した in vitro 透過性からニコチンテープまたはリドカインテープをヒトに適用後の血中濃度の予測
武内博幸, 石田真大, 浦野英俊, 杉林堅次

薬剤学, 72(4) : 251-261, (2012)

Split YMP skinを用いたin vitro試験と薬物動態パラメータからTTS適用時のヒト血中濃度推移を予測できることを示した論文である。In vitroからin vivoの予測は非常に重要で有り、本論文はそのために有用な情報を与えることから,本賞の受賞に値すると思われる。

創剤特別賞

受賞者なし

国際フェロー称号

Prof. Dominique Duchêne(Universite de Paris-Sud)

製剤の達人称号

  • 村主教行(塩野義製薬(株))
  • 沖本和人(東和薬品(株))
  • 迫 和博(アステラス製薬(株))
  • 久保田清(第一三共(株))
  • 石川英司(大日本住友製薬(株))
  • 横田祥士(アステラス製薬(株))
  • 山下親正(東京理科大学)
  • 岡本 亨((株)資生堂)