2012年度各賞受賞者一覧

選考未了の各賞は随時アップデート致します

学会賞

薬物動態と薬理効果の速度論的研究
安原眞人(東京医科歯科大学医学部付属病院薬剤部)

今回は公募のローテーションから病院所属者への授賞となる。安原眞人博士は約30年間にわたり病院薬剤部における医療・教育・研究を通して薬剤学の発展に貢献してきた。主な研究内容は、薬物動態を基盤とした薬理作用の速度論モデルの構築および薬効の変動因子の解明であり、医療薬剤学の草分け的研究として高く評価されている。また、ベイジアン法やポピュレーション解析を医療現場に導入し、薬物血中濃度モニタリングの普及・発展に大きく寄与された。さらに、本学会では各種委員会の委員としての活動の他、2008年度から理事を務め、2011年度には年会長として本学会第26年会を盛会裏に主催されており、学会の発展に対する貢献も大きい。以上の理由から、選考委員会において全会一致で選出した。

功績賞

松田芳久(神戸薬科大学薬学部)

松田芳久博士は、約40年間にわたり、製剤学を基盤とした研究・教育を通して、多数の優秀な業績を挙げるとともに、薬剤師教育においても幅広い活動を行ってきた。また、中央薬事審議会、日本公定書協会、医薬品医療機器総合機構等における精力的な活動を通じて、日米欧3薬局方の国際調和に尽力された。また、本学会においては、製剤技師認定制度の設立段階より、認定委員長として企画運営における中心的な役割を担い、認定制度の構築に大きく貢献された。以上の理由から、選考委員会において全会一致で選出した。

奨励賞

物性ならびに薬物動態制御を基盤とした薬物送達研究
尾上誠良(静岡県立大学大学院薬学研究科)

尾上誠良博士は企業在職中より、活発な研究活動を展開している。生理活性ペプチドの医薬応用を目的とした物性ならびに薬物動態研究に加え、低分子量医薬品の物性や全身性副作用を改善するための多様かつ独創的なアプローチによって顕著な成果を挙げている。特に、同氏の開発した光毒性リスクの予測法はレギュラトリーサイエンスにおいて高く評価されている。本学会においても活発に活動されており、将来的にも顕著な業績を挙げることが期待される。以上の理由から、選考委員会において全会一致で選出した。

外部刺激を利用したin vivo核酸デリバリー法の開発と評価
川上茂(京都大学大学院薬学研究科)

川上 茂博士はDDS分野、特に遺伝子・核酸デリバリーにおいて魅力的な研究成果を挙げており、100報を超える英文原著論文は国内外で高い評価を受けている。薬剤学分野の基礎および応用に関して独創的な研究成果を挙げつつ、本学会での各種委員活動や年会での多数の発表等、学会における貢献も大きく、将来的にも顕著な業績を挙げることが期待される。以上の理由から、選考委員会において全会一致で選出した。

タケル・アヤ・ヒグチ記念栄誉講演賞

Prof. Gordon L. Amidon (The University of Michigan College of Pharmacy)

候補者である Gordon L. Amidon 教授は、医薬品の消化管吸収を中心として、製剤学、物理・生物薬剤学、さらには医薬品の regulation に関する極めて広範囲な研究を行っており、現在、この分野における世界的なリーダーである。 特に、Amidon 教授は、医薬品の経口吸収に関する Biopharmaceutical Classification System (BCS) を創生し、その考え方は、現在、経口剤の品質を保証するための新しいガイドラインの国際標準となっている。また、Amidon 教授の研究は製剤学・物理薬剤学・生物薬剤学と多岐の領域に亘り、特に、物理薬剤学分野における薬物の溶解過程に関する理論的解析ならびに生物薬剤学における消化管吸収過程における数学的モデルの構築は、広く認知され利用されている。さらに、Amidon 教授の研究は BCS にとどまらず、消化管上皮に存在する酵素およびトランスポーターをターゲットとしたプロドラッグ化による医薬品の吸収改善に関する研究においても、すでに多大な業績を挙げている。これらの研究成果は、300報を超える原著論文および総説、専門書籍(30冊)、取得特許(18件)にまとめられており、その多大な業績に対して、国際的な多くの賞を受賞しておられる。また、AAPS (1998)、CRS (1993-1994) 両学会のPresidentを始め多くの学会において要職を歴任するなど、世界における薬剤学の発展に尽力されてきた。一方、Amidon 教授はこれまでに日本の大学、企業から17名にのぼるpost doctoral 研究者を受け入れるなど、日本の薬剤学研究の発展にも尽力されてきた。また、日本薬剤学会においても、年会や20周年記念シンポジウムで招待講演を行うなど、本学会の発展にも大きく貢献されておられる。以上の理由から、Amidon教授の功績は日本薬剤学会におけるタケル・アヤ・ヒグチ記念栄誉講演賞の受賞に十分値するものと考え、選考委員会において全会一致で決定したものである。

タケル・アヤ・ヒグチ記念賞

—当期設定なし—

旭化成創剤開発技術賞

新規苦み抑制技術Salting-out Taste-making Systemを用いたベシケアOD錠の開発
吉田高之,田崎弘朗,伊藤彰,小林正範(アステラス製薬株式会社技術本部)

強い苦みや収斂性のある薬物の口腔内崩壊錠化には、口腔内では薬物放出を完全に抑制し、消化管内では薬物を速やかに放出して高い生物学的利用能の保証が必要である。授賞候補研究グループは、塩により水溶性高分子が不溶化する塩析効果を利用して薬物含有微粒子に塩と水溶性高分子等を被覆したSalting-out Taste-masking Systemの原形を構築した。本システムからの薬物放出メカニズムを解明し、本システムの薬物放出制御因子を明らかにした。それにより本システムをプラットホーム化し、服用時ザラツキ感の無いソリフェナシン含有微粒子を開発した。これを錠剤化して初期の目的に合致した口腔内崩壊錠の原形が開発された。このシステムの工業化に必要なプロセス設計と最適化を経てベシケアOD錠が上市された。新技術の発明、プラットホーム化、スケールアップと工業化に必要な一連の研究成果は、グループを構成する研究員個々の高い創剤研究器量とチームワークによる事を示しており真に本賞の授与に値する。

旭化成創剤研究奨励賞

難水溶性薬物の結晶形制御と特殊製剤化法の開発
川上亘作(独立行政法人物質・材料研究機構生体機能材料ユニット)

最近の新薬開発を困難にしている要因の内薬物が難水溶性である事例が著しく増加している。授賞候補者は薬物の溶解性や吸湿性などの物性が結晶形に依存することに着目しその制御法を結合エネルギー理論と実際の両面から開発した点が高く評価される。特に非晶質の緩和現象と製剤化の研究成果は広く製剤設計に応用されるものと期待される。このほか、マイクロエマルションの経口製剤化等の特殊製剤化法の開発にも新規な創剤奨励研究としての価値が十分に見られる。

永井記念国際女性科学者賞

伊藤清美(武蔵野大学薬学部)

伊藤清美博士は病院での勤務経験を活かした薬物動態を中心とする研究を活発に展開されており、薬物間相互作用による体内動態変動を定量的に予測する手法に関する成果等において国際的に高い評価を受けている。また、本学会においては2011年度より「薬剤学」編集委員長を務める他、非常に活発な活動を行っており、今後の多方面での活躍が期待されている。以上の理由から、選考委員会において全会一致で選出した。

優秀論文賞

—当期設定なし—

創剤特別賞

受賞者なし

国際フェロー称号

Prof. Gordon L. Amidon (The University of Michigan College of Pharmacy)

製剤の達人称号

  • 岩田基数(大日本住友製薬(株))
  • 神谷明良(ファイザー(株))
  • 德永雄二(澤井製薬(株))
  • 片山博仁(バイエル薬品(株))
  • 肥後成人(久光製薬(株))
  • 堀沢栄次郎(マルホ(株))
  • 中田雄一郎(参天製薬(株))
  • 柘植英哉((社)東京医薬品工業協会)